読書案内 「下流同盟 格差社会とファスト風土」 三浦 展〔編著〕(朝日新書019 ¥720)

1 この本は消費社会研究家の三浦展(みうらあつし)氏の編著した本で、大学の先生が書いた部分もある。

現代社会の行方(アメリカ化)が大変よく分る。

 

2 1995年~2004年の10年間で人口1000人当たりの刑法犯認知件数増加率の上位(日本国内)は、

第1位が香川、第2が佐賀、第3が兵庫となっている。

静かな地方都市で犯罪が増加している。大阪、東京は何と平均以下である(P20~)。

地方で流動的で匿名的な空間が拡がっている。地域社会が不安定化しつつある。

 

3 人々はマイホームのマイルームからマイカーに乗ってショッピングモールに行って帰ってくる。

心理的には閉じたプライベートな空間から外へ出ていない。

コミュニケーションがない(P29)。

「非効率で無駄の多いコミュニケーションこそが人間社会の基本ではないのか。」そのとおりだ。

地域社会が壊れている。

 

4 政治家や官僚や御用学者らは、「美しい日本」とか「庭園の島」といった美辞麗句によって日本を語る一方で、

日本中みっともない高速道路を建設して昔ながらの自然景観を破壊し、

馬鹿馬鹿しいほど巨大で殺風景なショッピングモールが歴史ある街並みを破壊することを

自由競争の名において放任してきた。

なのにその矛盾に彼らは目をつぶる。

何故なら、そうやって日本の自然を破壊し、地域へのアイデンティティを危機に陥れ、国家への帰属意識を

高めるからである。

本来、美しかった日本を壊すことで、新しい美しい日本へのナショナリズムを昂揚させるのだ。

それが戦略であるとすれば、かなり巧妙な戦略である(P40~)。

この部分の指摘は大変するどい。アメリカはこの地域社会が完全につぶれた。

歴史を捨て、国土を捨て、故郷を捨てた日本人にも、新たなナショナリズムが必要になるかも知れない(P42)。

そうやってアメリカ化する。

 

5 現代の経済は、人々をビジネスモデルを考える少数のエリートと彼らの考えるとおりに働く非正規雇用者に

二極分化させる傾向を持っている。

サービス化した経済社会においては、企業は消費者の変化に日ごとに対応することを余儀なくされるため、

従業員を正社員として固定することができない(P59)。

その結果、階層の固定化が生じる危険性がある(P61)。

 

6 アメリカ、コロラド州では16歳で退学する生徒が多い。

大型店が増えて地元の小さな商店が減ることの意味(P91~)

① 個人化→社会関係の欠落

② 低賃金化

③ 地域のアイデンティティがなくなる → 場所というルーツがなくなる → 人生の意味の喪失 →

人間が人生の連続性を感じられること → 自分自身を見失うこと

アメリカウォルマートの売上高は2005年で2850億ドル。

スウェーデンやアイルランドのGDPより多く、アメリカのGDPの2%に匹敵する(P125~)。

ウォルマートは日本のイオンの7倍強の売上(P148)。

 

7 フランスの都市計画についても後半で書いている。

とても参考になる。この本はとても内容が充実している。読んでもらいたい一冊である。

  mae

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