読書案内 「生きる意味」 上田紀行 著(岩波新書931 ¥740)

1 この本は文化人類学の学者さんの本である。内容が深い。

これまで、私たちは、「他の人が欲しがるような人生をあなたも欲しがりなさい」という人生観を

植付けられてしまったのではないか。

それは楽な社会である。

自分の頭や自分の感性を殆ど使わなくてもいいから。

自分が何が欲しいのか、自分にとっての人生の意味や幸福は何なのかなどという、私の「生きる意味」などを

突き詰める必要はなかった(P16~)。

単に偏差値が合っているだけで志望が決まっていた。

バブル崩壊。

私たちが土地を買い、株を買ったのは、他人が土地を欲しがり株を欲しがっていたから…(P18)

「みんなと同じ欲求を持て」という命題に代わる価値観は現れてきていない。

それが、現在の日本人の状況である(P23)。

 

2 「知恵を出し、努力をした者が報われる社会」とは、市場が「勝ち組」と判断し、

報酬にあずかっている人たちを「知恵を出し、努力した人」と認定しましょうということ。

市場から評価を受けた人たちを努力した人と認定し褒め称えようとする社会である(P74)

(その通りだと思いますね。)。

この先生のいうように、最近の政治家、官僚の腐敗について、そのニュースを聞いたり、

みのもんたの解説を聞いていると何か「水戸黄門ショー」的なものがある。

だから切り捨てろというが、何かしらじらしい。

この裏には、「だから民営化だ」といい、「構造改革万歳!」となるのはおかしい(P84)。

この水戸黄門的日本の勧善懲悪はどこかおかしいと思う。

 

3 「社会に生きている人間は誰もが高い報酬を得ることを第一の欲求としている」ということが

前提とされている社会の「生きる意味」におけるあまりの貧しさは、既に繰り返し指摘してきた。

仕事のやりがいは報酬の額だけではない。

自分の仕事に対する誇り、自分の技量が生かされ、自分ならではの貢献ができることの喜び。

仕事が取り結ぶ人間関係の豊かさ。

報酬という数字ではなく、「仕事自体」の喜びがそこにある(P134)。

 

4 人生の中で苦悩や違和感があること。それは私たちの「生きる意味の再構築」に必要不可欠である(P152)。

私たち凡才にも「そろそろ生きる意味を考え直す時期ですよ」ということを気づかせてくれるために、

苦悩や違和感がやって来てくれる。

その意味では、苦悩することや現実への違和感を感じることは、私たちの「内的成長」のきっかけになる。

人生のメッセージなのだ(P153)。

  mae

Copyright© 2008 ito kunihiko All Rights Reserved.

アイ・ブレイン サニッシュ