読書案内 「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」 田中森一 著(幻冬舎)

1 この本は、元特捜検事で弁護士の書いた本です。

2000年石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕起訴され、上告中の人です。

東京高裁は懲役3年の実刑判決を下しています。

そういう状況下の人の書いた本ですが、弁護士としてすごく勉強になった本です。

法律家のもつリスクがよく分かるものです。

 

2 勿論、どんな世界でもすごいやり手の人と鳴かず飛ばずの人がいることは常識的なことです。

法曹界でも全く一緒で、検事の世界でも華々しく出世していく人と田舎をグルグル回っているだけの人が

ハッキリしています。

その中で特捜検事となった著者が仕事に情熱を持ってやって行く姿がよく分かりました。

文字通りやり手の現場の人だったんだなーと感じさせます。

弁護士も多くの勤務弁護士をかかえ、毎日遅くまで仕事をしているやり手の人がいることは確かです。

この著者は検事を辞めて弁護士になったんですが、やはりこの世界でも「やり手」であり、

毎月1000万円もの顧問料が入っていたというから驚きました。

また、7億円でヘリコプターを購入して経費にしていたという点もびっくりしました。

 

3 そういう人の立身出世伝という面も書いてあります(本人は苦学して定時制高校を出て、

浪人の上、岡山大学に入っています。)。

この本の中身を少し紹介したいと思います。

① 人間社会には汚い世界がある。必然的にドブのエキスを生む。

犯罪者はそうしたドブのエキスを吸いながら、罪を犯すのである。

検事を含め法曹界における我々の仕事は、所詮その「ドブ掃除」に過ぎない。

正義を振り立て、人をリードする職業なのではない。人間のやったことの後始末をするだけだ。

それも人間の一番汚い部分の後始末である。(153~154頁)

② この国は、エスタブリッシュメントとアウトローの双方が見えない部分で絡み合い動いている。

彼らはどこか似ている。

エスタブリッシュメントと呼ばれるトップ階層からアウトローと呼ばれる裏社会の住人に至るまでの

付き合い中から、それを感じた。

表と裏の社会が一体となり、ことを運ぶその現場をこの目で何度も見てきた。(401頁)などである。

具体的な事件についても他に実名をあげてかなり書いてある。

 

4 正直に私の思うところを言わせてもらうと、この人は深みにはまり過ぎたと思う。

弁護士は事件の渦中の人になったらいけない。

手形の裏書をしたということが書いてある。それは絶対にしてはいけないことなのである。

やり手の極道や経済人は、弁護士の能力をはるかに超えるワザを持っている。

事件にはまってしまうということがある。

実際、私が弁護した刑事事件においても、この先生ははめられたなという感じがする件がある。

自分はやり手など慢心が出ると危ない。

実際にヒヤリとすることがこれまで私自身もあった。

これは慢心と無知とがなせる技で、運がよかったと思っている次第である。

興味のある人に御一読していただきたい。

  mae

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