読書案内 「地球システムの崩壊」 松井孝典 著(新潮選書)(1100円)

1 この本は、東大の地球惑星物理学の先生の書いた本である。

松井先生の本は他にも読んだことはあるが、この本「地球システムの崩壊」が大変興味深い。

この先生の幅広い教養が滲み出ていて大変に勉強になる。

宇宙のことが書いてあるのだが、非常に哲学的に感じる。

 

2 20世紀について、この先生はこのように言われる。

「右肩上がりで拡大を続けることが可能な、最後の世紀であったのだ。」(19頁)。

そして、21世紀を「21世紀はその矛盾が露呈し、

それらの共同幻想に基づく人間圏の内部システムが崩壊する最初の世紀だろう。」(同頁)。

この指摘はするどい。「幻想」という点が特にするどい。

 

3 さらに、現在の人間圏がビックバンに向かっているとされる(36頁)。

即ち、国家や企業のような従来のユニットが強固な求心力を失って…旧来の共同体を破抾する流れ」

があるとされる(同頁)。

その理由にインターネットの普及があるといわれる。

情報が個人に拡散するから求心力が弱まるとされる。

 

4 地球環境というのは100万年をスケールとして高温から寒冷といった大きな変動を繰り返すと

予想され、このため生命が絶滅したりすることは当然のことであると説明される(108頁)。

また、20億年後位に地表温度は上昇し水蒸気の蒸発が増え海がなくなり、

その後、大量の雨が降り大陸地殻も侵食により消失する(115頁)。

月のようにツルツルになってしまうということである。

最後、100億年後に太陽にのみ込まれて、ガスとなって散逸する(116頁)。

 

5 以上の他にも、金星のことや月のことやヨーロッパの宇宙開発のことなどが書かれています。

この先生は、新しい智の体系のもとで、人間圏が1000年後も存在する内部システムの構築が

急務であることを強調されている(221頁)。私もそう思いますね。

平安時代に社会保険や年金などはありませんでした。

勿論、核兵器もなければイージス艦もありませんでした。

しかし、そのシステムにより1000年後の現在は存続しています。

ところが、20世紀という高度な文明を築き上げた現在、21世紀に終末をもたらす危険があり、

そのシステムの崩壊がはじまろうとしているとは…。

  mae

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