コラム 「転機~私を変えた出来事~」その2

仕事に出る前に、汗だくになってしまう毎日である。そして、夕方は仕事を済ませて病院に向かう。

2時間程度、妻とその日のことや子供のことを話す。

この会話の中には将来の話題が一切出てこない。

病院の先生は、今年の暮れまでの命であると冷たく

(気持ちは冷たい人ではないでしょうが、聞かされるほうはそのように感じるものである。)言い放つ。

妻は、毎日毎日夕方私が訪ねるのを楽しみにしている。それから、夕食の準備である。

子供たちには、勿論、不治の病であることは話していない。

そのうち良くなって退院する旨を繰り返して話す。

 

手術をしないことになり、1度、退院することになった。

子供たちも喜び、この幸せが続いたらと心より思った。今度入院するときは覚悟せねば。

1ヵ月後に再入院になってしまった。

 

妻は覚悟している。そのことは私には良く分かった。

気の強い所があった妻の顔は温和な表情になり、毎日毎日を病院のベッドで淡々と暮らすようになった。

私が裁判の話をすると、面白がって笑ったりしている。

何故か子供の話は全くでない。

しかし、たった一言、「子供はあなたの思うように育てて、それでいいの。」と言った。

やがて、少しづつ体力の衰えが表れてきて、それでもなんとか39回目の誕生日を

ベッドの上でむかえた。

その3ヵ月後、私と2人きりの病室で息をひきとった。

 

私は、6ヶ月の家事で体力が限界にきていた。

正直言って、とても苦しかった。よく頑張ったねとでも言うように、安らかに私を解放してくれた

ような最後であった。

  mae tugi

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