コラム 「矢谷家の家訓」

京都の老舗の酒店である「矢谷家の家訓」が本に載っていました。

天宝8(1837)年に定められたものということですが、私としては

大変参考になったものですので、皆様にもお知らせいたします。

 

一 主人たる者は、家人の見習うところなれば、まず身を正しくして慎み、家内(いえうち)を

善に導くべし。親子、兄弟、夫婦仲むつましく、家人ならびに出入りの者を憐れみ、かりそめに

も怒りののこることなかれ。

 

一 常に心がけ陰徳を積むべし。

陰徳とは、善事をなして、人に知られないことを求むるをいう。

貧窮を救い、飢寒を憐れみ、老人を助け、病人をいたわり、生ある物を殺さず、に慈悲の心を

根とすれば、自然に天道冥加に叶いて家は長久なるべし。

 

一 「足りるを知れば、家は貧しいといえども心は福者なり。」

足りる事を知らざれば、家富めるといえども心は貧者なり。

このことをよくわきまえ、おごらず、贅沢するべからず。

 

一 家を治めるは堪忍を第一とす。

奢りをこらえ、欲を抑えて、欲しいままにせざるも、みな堪忍なり。

万のこと心にかなわざることあるも、堪忍をもちい、怒りを知らざれば家のうち和らぎ親しむ。

 

一 美酒、美食を好み、仕事をひとまかせにするべからず。味薄くして身を働かせれば

食気とどこおらず。血気めぐりて養生の第一なり。

 

一 先祖の年忌、法事ごとを大切に勤むべし。

かつ、先祖が立て置かれたる家法は堅く守るべし。

家永きのなり。万に一つでも、利口だてにして新法をたくらむなかれ。

これ家滅亡の元と心得るべし。

 

一 無理に利をむさぼれば、かえって財を失い禍のくるもとなり。

家業をおこたらず、おごらざれば自然に家は安泰なり。

 

一 人の悪しきことを告げ知らす者ありとも、みだりに取り上げ、用いるべからず。

聞かざるごとくするもよし。これ、家人多くと暮らす者の心得なり

 

一 富むる家に貧なる親戚の親しく出入りするは主人の人徳厚きゆえなれば、その家の

誉れと心得るべし。

 

一 何事も思慮ある人に相談して取りはからうべし。

わが身のことは、身勝手あるゆえ、心得違いあり。岡目八目ということを心得ておくべし。

 

一 金銀多く子孫に残し与えんより、財を捨て、広く善行を行い、陰徳を積みおくべし。

その徳は子孫にめぐりて子孫の幸いとなる。

 

一 何事も、最初を慎重に取り組まざれば、災いの元のなるのは必定。

金銭貸借証文や手形などは、最初に念を入れ、規定を正しくすれば後難生ぜず。

 

一 商人は格別な物知りになるにおよばず。

ただ、物知る人に人の道を聴き、これをよく守り、よく行うべし。

かつ芸事はつたなさがかえってましなるを知るべし。

 

この条条を常に心がけよ。世が移っていこうとも、この家訓を守るという箍が外れなければ、

子孫の代まで商いできるのは、何の疑いもない。

 

我が家の家訓にもしたいものです。

  mae  

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