対談 弁護士と息子 対談 テーマ 「我国の犯罪事情~凶悪化もしていなければ、治安も悪化していない~」

息子 (ム) 弁護士 伊藤邦彦(弁) 以下、(ム)と(弁)で表示します。

1 凶悪犯罪は増加していない!

(ム)最近、ニュースで秋葉原の事件とか報道されていて、凶悪犯罪が増加しているとか言って
   いた人がいるけど…。

(弁)確かに「通り魔殺人」とか「家庭内殺人」が報道されることは多くなったと言える。

   しかし、それらは、例外的な犯罪で、むしろ、殺人とかいう犯罪は1950年の後半から

   一貫して減少していると言えるね。

(ム)エーッ!

(弁)殺人も8割以上が顔見知りで、4割は家族間で起こっているということを知っている。

   日本の殺人の特徴だと言われているね。

(ム)どれくらい?

(弁)1955年に殺人で年3500人以上が検挙されている。

   しかし、2005年では1300人位でずっと減少している。

   そればかりでなく。少年犯罪、若年犯罪もずっと減少傾向にある。

(ム)そうか。

(弁)しかし、意外なことに高齢者犯罪(60歳以上)が増加傾向なんだ。

   それでも、刑法犯の40は%が少年であるという点は、それほどかわってないがね。

(ム)窃盗なんか、少年に多い?例えば、万引きとか。

(弁)そこなんだ。

   万引は少年犯罪だったんだが、2006年の統計ではなんと60歳以上の高齢者の万引が30%を超えて、

   少年の割合を超えたんだ。これこそ社会の変化だね。

 

2 何故、高齢者犯罪が増加するのか

(ム)社会の変化?

(弁)つまり、「少子高齢化」だね。格差社会の広がりと言えるね。

(ム)高齢者が何故犯罪を犯すの?

(弁)警察に犯罪を犯して検挙された人は年200万人位いるんだ。

   受刑者、つまり、刑務所に行く人は、約3万人位なんだ。

   つまり、よほどの重大事件以外、刑務所に行くことはないといえるね。

(ム)そうか。

(弁)受刑者の多くは、無職とか家族がいないとか、そういう人なんだ。

   だから、弁償ができず、現実に800円位の弁当を万引きして、常習累犯だといって刑務所行き

   になった人も少なからずいるんだ。

   そればかりかIQが低い人、うまく自分のことを言えない人なども少なくない。

   だからどうしても社会的弱者と考えられる人が刑務所行きになってしまうんだ。

   現在、格差社会が拡大し、高齢者が無職であるとか家族がいないと、どうしても実刑になってしまう

   傾向がある。

   そして、そういう人は身寄りがないので、刑務所で満期までいることになり長期化している。

(ム)だから、刑務所の人員が多いとかいわれているんだね。

(弁)そう。受刑者が増加しているのは、犯罪が増加しているのではなくて、高齢者の

   長期化ということだね。統計をみると1973年に40才以上の受刑者は20%位だった

   んだが、2005年には50%になっている。このことで明白だよ。

 

3 理解できない法改正

(ム)しかしね。2004年の刑法改正で殺人の法定刑の下限が3年から5年になったけど、
   どういうこと。

(弁)これが、理解できないね。厳罰化になっているのはアジアでは日本だけだよ。勿論、

   アメリカ、ヨーロッパも厳罰化だがね。アメリカなんか「犯罪との戦争」(War on Crime)

   とかいって、この方向だ。しかし、疑問だね。

(ム)3年から5年ということは?

(弁)そうなると原則的に、裁判官は、執行猶予にできないということだ。裁判官の権限が

   小さくなったといえるね。

(ム)あと、窃盗に罰金刑が入ったね。

(弁)2005年の刑法改正だね。

(ム)これはどういうこと。

(弁)これはね、検察官が略式命令を請求できるようになったということで、検察官の権限拡大だね。

   とにかく、統計上、犯罪も増加せず、治安も悪化していないのに、何故、厳罰化していくのか

   理解できないね。そんなことより、刑務所から出てくる人の受け皿をきちんとすることが大切

   であるという学者の意見もある。また、高齢者の孤立化ということも考える人があるね。

  mae

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