コラム 「歴史上の人物西行」

私が愛してやまない歴史上の人物に西行という人がいます。

西行は歌人です。

西行の生きた平安末期から鎌倉時代は、今の日本に少し似ていると思いますね。

というのは、これまでは荘園を中心に豊かに生活してきた貴族が保元の乱、

平治の乱、源平合戦などが起こり、時代が武家社会に移行するという激動期だったからです。

 

その中で西行は鳥羽院の警護に当たる北面の武士でした。

エリートといっても、いい地位であったのに、その身分を捨てて、世捨て人のような生活に

入っていくのですね。時に23歳だったそうです。

 

世の中の状況に失望したという感じがしなくもありませんが、実はそうではなく、

生きる不安を歌による美の世界によって支えようとして出家したのではないかと小説家の

辻邦生氏は言っています。

明恵上人の伝記の中に、西行が尋ねてきて歌を作る時の心境について、このように言って

いますね。

 

この部分は私が要約します。
即ち虚空のような心で、一首読んでは一体の仏像を造るようだし、一句を思っているときは、

仏教の真言を唱えているようで、それらの歌により人としての法(道)が分かることがある。

いい加減な気持ちで歌をつくっていると、人生のとんでもない方向に入ってしまう。

大体以上のようなことです。

 

辻邦生氏も、敗戦の中で文学がなんの役に立つのかと感じて、15年間も小説が書けなかったと

いわれています。

それでも、アウシュビッツの生存者達の体験説の中でゲーテやハイネの詩や小説が彼らを救った

ということから、人間を生き延びさせるものは単なる日常の現実ではなく、言葉であると思い、

復活したといわれています。

西行もおそらくそうではないかと思った次第です。

  mae  

Copyright© 2008 ito kunihiko All Rights Reserved.

アイ・ブレイン サニッシュ